薄桜鬼

BL
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【斉藤は俺のもの】

「・・・・・・」

「・・・・・総司。」

「・・・・」

「・・・・起きろ、総司。」

斎藤は、少し声を大きくして言う。
斎藤の目の前では、沖田がぐっすりと眠っている。
沖田が眠っている場所は、斎藤の上。
昨日は、長州の動きが怪しいと言う事で京の見回りを強化しろと土方に命じられ、新選組の幹部連中が屯所に帰ってきたのは夜も明けてから。
今頃、幹部連中は交替で睡眠時間をとっていることだろう。
何故沖田が斎藤の上で眠っているのかと言うと、つい先程斎藤のもとへ沖田が訪ねてきた。
斎藤が、土方からの任務書を読んでいたところ目を擦りながら沖田が部屋にやってきた。
声をかけても返事をせず、近寄っていった斎藤を押し倒すように倒れこんだのだ。
斎藤より背の高い沖田を斎藤は支えきれず、そのまま床へ倒れこむ。
そして、今に至る。

「・・・んっ・・一君?」

「総司、寝るなら自分の部屋を使え。」

「・・・・・」

斎藤の名前を呼ぶと、また沖田は気持ち良さそうに眠りはじめる。
沖田が、前から斎藤の胸に倒れ込んだためお互いが向かい合っている状態だ。
斎藤は小さく息をつき、沖田を見る。
余程疲れているのか、少し顔色が悪い。
そっと斎藤の手が沖田の頬に触れると同時、襖が開けられる。

「一君、さっきすごい音が・・した・・・・・けど・・・・・」

「斎藤、長州の奴・・が・・・・・・」

すると、平助と左之が部屋に入ってくる。
二人は、目の前の光景についていけないのか目を見開いた状態で動かない。

「・・・総司をどけて欲しい・・・・・。」

斎藤の声に、二人はようやく沖田が寝ていることを理解したようだ。
そして、沖田を斎藤の上から起こそうと沖田を掴む。
すると、つかんだと同時沖田が斎藤をがっちりと抱きしめ離れようとしない。

「総司、本当に寝てるのか?」

「すごい力だな、これは。」

「総司、起きてるなら起きろ。」

斎藤は、沖田を揺すってみるが起きる気配はない。
平助と左之は、小さく笑い沖田を起こそうとしていた手をどける。

「一君の上って、そんなに落ち着くもんなんだな。」

「あぁ、きっと布団と同じくらいなんだろうよ。」

そう言って、二人は斎藤に声をかけて部屋を出ていく。
決して見捨てた訳ではなく、自分たちじゃない他の誰かを呼びに行くためだ。
斎藤は、軽く息をつき沖田を見ると、いつから起きていたのか沖田は目を開けて斎藤を見ていた。

「・・・起きてたのか。」

「初めから寝てなんていなかったんだけどね。」

「じゃあ、何故ここにっ・・・・総司・・・・?」

沖田は、斎藤の額に軽く口づける。
驚いている斎藤を見て、沖田は小さく笑い縛っている斎藤の髪を解く。
そして、そっと髪に触れギュッと抱き締める。

「一君と二人きりになりたかったから・・・・って理由じゃ駄目かな。」

「・・・・・」

斎藤は、ただ小さく首を横に振ってみせる。
そんな斎藤を見て、沖田はただ笑うだけ。
沖田は、体を反転させて今度は斎藤を自分の上に乗せる。
斎藤を下から見上げ、沖田はただ斎藤の髪を撫でる。

「一君・・・・好・・・」

沖田が何かを言いかけたと同時、襖が思い切り開け放たれる。
沖田と斎藤の視線の先に居たのは、副長である土方。
土方は、部屋に入ってくると真っ先に斎藤を抱きあげる。
そして、脇に抱える様に斎藤を持つと沖田をじっと見ている。
そこに、さっき部屋を出ていき土方を呼んできた平助と左之が入ってくる。

「総司、起きてたのか?」

「じゃなきゃあれはおかしいって!」

二人は、初めの状況を見ていなかったせいか小さく笑い合っている。
しかし、よく見てみれば斎藤の横で一本に束ねられていた髪が解かれていて、斎藤は土方に抱きあげられている。

「一君、その髪・・・・・」

平助が、一つの異変を指摘しようと口を開いたと同時、平助の横にあった襖が音もなく倒れていく。
平助は、恐る恐る襖を見ると明らか刀傷と思われる傷が幾つもついている。

「総司、何やって・・・・・!!!」

左之の声で平助は沖田を見ると、沖田は抜刀した刀を構え刃先を土方に向けている。
土方も抜刀し、斬りかかってくる沖田の刃先を受け止めている。
しかし、土方の片手は斎藤を抱える事によって封じられており力は沖田の方が上のようだ。
斎藤も斎藤で、巻き込まれるのを防ぐためなのか抵抗もせず大人しく抱えられている。
平助は沖田と土方同様に抜刀し、左之は稽古で使っていた槍を構える。

「土方さん、一君を返してくださいよ。」

「斎藤はテメェのもんじゃねぇだろうが。」

「土方さんのものでもないですよ。」

「・・・ありゃ、斎藤の取りあいか?」

しかし、当事者である斎藤は、抵抗せず土方の腕の中でいつでも刀を抜けるようにと刀に手を置いている。
そして、斎藤に向かってきた刃先を全てはじき返す。

「斎藤も冷静すぎだな。」

「でも、さすがって感じもするけどねぇ。」

平助と左之は、小さく笑い合って経過を眺める。
沖田と土方は、未だ斎藤の取り合いを繰り返している。
たまに、平助や左之目がけて飛んでくる刃を刀と槍で受け止めはじく。
飛んでくる物品は、さすがに刀では難しいため左之の担当だ。
しかし、幾ら待っても斬り合いが終わりそうにない。
二人は、どちらかが降参をしないでもしないと斬り合いをやめるつもりはないだろう。
そう読んだ平助は、左之に耳打ちをする。
そして、お互い内容を把握したのかニッと笑い合って各自の仕事に移る。
とりあえず、斬り合いの元凶である斎藤を助けようと二人で間にはいる。
沖田と土方の刀を左之が槍で受け止め、平助が少し驚き隙を見せた土方の腕から斎藤を助け出す。
そして、沖田と土方から少し距離を取ったところに斎藤を下ろす。

「すまない、助かった。」

そういう斎藤の声と同時、左之が二人の刀をはじきどうにか戻ってくる。

「気にすんな。お前が止めなきゃ二人もとまんねぇしな。」

「そうだぜ、一君。」

「・・・平助君、左之さん。僕の斎藤君、返してくれるかな。」

沖田は、刀を片手に三人に近づいてくる。
斎藤を庇うように、平助と左之も刀と槍を構える。
続いて、土方も刀を片手に沖田に近づく。
斎藤は、小さく息をつき沖田と土方の間にはいる。
すると二人は、刀を構えていた手を下ろし斎藤を見る。
そして、沖田と土方は刀を鞘にしまいそっと斎藤に近寄る。

「斎藤君、髪をおろしてた方が可愛いよ。」

「一本に束ねてるのも武士らしいが、それもまたいいじゃねぇか。」

「・・・・これだと刀を握る時に邪魔です。」

斎藤は冷静に言って、もう一度髪を結おうとする。
しかし、その行動を平助と左之が止める。
斎藤が驚いて二人を見ると、二人は苦笑し斎藤に小声で謝る。
二人の視線の先を見ると、そこには刀を再度抜いた沖田と土方がいる。
平助と左之は幹部と言う事もあり、多少土方と考えが合わなければ反抗することができる。
しかし、今は土方だけではなく剣の達人と言われる沖田もついているのだ。
逆らわず大人しくしていた方が身のためだろう。

「悪いな、斎藤。あの二人を抑えるのにはこれが一番なんだ。」

「一君が、髪をおろしてくれてるとあの人たちも落ち着くからさ。」

「左之助、平助、よくやった。」

「へぇ、二人ともよくわかったね。見直したよ。」

沖田と土方は、小さく笑って刀を鞘に戻す。
そして、土方は先ほど何もなかったかのように沖田に話しかける。

「それにしても、よくこの髪型斎藤に似合うとわかったな。」

「前に見たんですよ、斎藤君が髪をおろしているところを。」

「・・・総司、今朝の気配はお前か。」

「やっぱり気づいてた?」

「あれだけ表に出してたら、気づかない者はいないだろう。」

「じゃあ、あれはサービス?」


「「・・・・・は・・・・・・?」」

それまで見ているだけだった平助と左之が間の抜けた声を上げる。
しかし、当の沖田はいつものように笑顔を浮かべている。
そして、斎藤は諦めたように息をつき今まで髪を結っていたひもをしまい、髪を結うのをやめる。
土方は、少し考えているようで顔を顰めている。

「おい、平助。ここにいたらまた巻き込まれる。
 今のうち、逃げた方がよくないか?」

「お・・おぅ・・・左之さん、俺もそう思う。」

二人は小さく頷くと、一歩ずつゆっくりと後ろに下がる。
そして襖に手を掛け、逃げようとすると平助の頭と左之の足が何かに当たる。
ドンっという音と共に振り返ってみると、そこには先ほどまで考え込んでいた土方が立っている。
さっき考え込んでいたのは、この二人の逃走を止める事だと今更気づいても遅い。
二人は手を掴まれ、一度室内に戻される。

「どこに行くんだ?お前ら、今日非番だよな?」

「・・・そっ・・そうだっけなぁ・・・!!!!!」

「・・・いや、何かあっただろ、何か・・・!!」

「あぁ、これから俺の手伝いだろ?」

土方は珍しくニッコリ笑うと、顔が引きつっている平助と左之を引きずる様にして自室の方に向かう。
二人は、小さくため息をつき自ら土方の部屋に向かう。
その三人の姿を沖田は見送り、改めて斎藤を見る。
斎藤は、三人を見てから沖田と同じように沖田を見上げる。
そして、沖田は自分を見ている斎藤の頬を撫でそっと額に口づける。

「斎藤君・・・好きだよ。」

「あぁ・・・・。」

斎藤は、少し目をそらし小さく返事だけを返す。
それだけで、沖田には伝わると思ったから。
沖田は、その場に座り斎藤を膝の上に乗せる。
そして、二人で静かな空を見上げる。
まだ、もう少しこんなゆっくりとした時間が続くようにと思いながら・・・・・。


後書き
少しBLぽくなってしまいました;
苦手だった方には、申し訳ありませんでした。

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