第20話 悲しき恋歌

暴漢に囲まれたジュンヨンとゴンウの2人は、懸命に応戦する。
そして、ゴウンは駆け付けたパトカーに紛れて、逃げようとする暴漢者たちの中にいたミンホと目を合わせた。



ミンホは場が悪そうに逃げ去って行った。

『あいつらは、ゴウンを狙ってた』

『判ってる。仕組んだ奴はハッキリしている。
でも、気付かないフリをしているんだ。
とにかく、有難う!助けてくれて』

『今更…』

ゴウンの言葉にジュンヨンは、照れくさそうに答えた。

『携帯用音源として、お前たちの作品を買いたい』

ゴウンは、互いのビジネスとして、契約金をジュンヨンに手渡して、2人の友情は復活した。



ゴウンが帰宅すると.姉スジから妊娠している報告を受ける。 
一瞬、動揺している所にサンジンが帰って来た。
ゴウンは、庭先でサンジンを殴り倒す。

『姉さんに黙っててやってたんだぞ!あんたの企みを!』

『お前の言葉が信じられなかった…。
スジとここまで築い地位を失いたくなかった。
もう1度だけ、チャンスをくれ…。
会社はもういい。諦める。全て失ってもいい!
でも、スジだけは失いたくない!本当だ!
スジには、言わないでくれ!頼む!』

サンジンは、ゴウンの前に座って必死に詫びて頼み込んだ。


ジュンヨンとヘインは、ジンピョとチョルスと会い、ゴウンと和解した事を報告した。
そして、ヘインの歌手再活動のレコーディングを進めて行く。

ゴウンは、会社復帰したガイン会長が同席する会議の中で、サンジンの名前を伏せて、自社情報が他社に漏れているのは、内部スパイがいて証拠が手元にある事実を報告をした。
そして、息子ゴウンからの報告を受けたガイン会長は、社長サンジンに対して徹底的な調査を命じた。




ヘインのコンサート準備に取り掛かったジュンヨンらのレコーディングスタジオにゴウンとシンヒが激励しに訪れた。

徐々に世間のヘインの人気も高まって行く。

こうして、歌手パク・ヘインとしての復活コンサートがスキー場で開催する準備が決まった。




一方、サンジンはゴウンを裏切ってKNT通信の株買収を企む。
そして、部下のミンホに命令を出していた。
しかし、ミンホはサンジンに内緒でゴウンに連絡し、秘会して書類を差し出した。

『これで、この間の拉致事件はチャラですからね。
俺は頼まれただけで、オ・サンジンとは何も関係ない』



ゴウンは、黙ってミンホの前に封筒を差し出した。
信用出来ないサンジンの動向を得る為、ゴウンがミンホを利用して、調査させた報酬だった。

『命懸けで盗んだんだ。秘密は守って下さいよ。もう会わないようにしましょう』

ミンホが立ち去った後、ゴウンは書類を確認した。
書類の中身は、【KNT通信・株式取引状況】だった。

翌日、サンジンにはNY支社への辞令の貼紙がされていた。
サンジン自身が動揺して、ゴウンに問い詰めた。

しかし、ゴウンは調査して、サンジンの粗悪な生い立ち、全て知り尽くしていた。

そして、KNT通信の株式を買い占めている投資家の名簿を叩き見せた。
すると、サンジンは言い訳をしょうとする。

『黙ってろ!!俺は今すぐ追い出したいのを我慢してるんだ!
NYに行って、大人しくしてろ!
また、何か企んだら人生の破滅だぞ!一生、刑務所暮らしだ!!
親父と姉さんに黙っているか悩んでる。アンタの仕度中に考える』




パク•ヘインの復活コンサート前日を控えた。
ジュンヨンは、改めてヘインにプロポーズする為に花屋を訪れていた。
しかし、コンサート会場となるスキー場から電話が入る。
ジュンヨンは、ヘインを連れてスキー場へ行く。
そして、会場準備の間、ヘインはカフェで待っていた。

しかし、準備が難航して、すっかり夜になった頃、ジュンヨンから、ヘインの携帯に連絡が入った。

『遅くなりそうだから、ヘインの部屋を別に取っておいたから、フロントで鍵を貰って』

『そうなの…判った』

ヘインが鍵を受け取って、部屋の中に入ると天井一面にカラフルな風船が飾られていた。



中央のテ−ブル周りには、沢山のバラの花が飾られて、大きな箱と結婚行進曲を奏でたオルゴールとノ−トが置かれていた。

ヘインは、ノ−トを手にして挟まれたメッセージカ−ドを開いて見た。

『パク・ヘイン、お前を失って会いたくなると書いた言葉だ。"愛してる"』

またノ−トには、ジュンヨンが点字で書いた文字が書き綴られていた。

そして、大きな箱を両手で開けると純白ドレスの上に2人が交わしたボイスレコーダーが置かれていた。

ヘインはそっと、再生ボタンを押してみた。

『ヘイン、ずっと前から、言いたかった。
毎晩、練習したんだけど、恥ずかしくて…
ヘイン…、愛してる…。結婚してくれ…。
今、外で返事を待っている所なんだ…』

笑みと共にヘインの目から、涙が溢れ出した。

『あ…本当に寒いよ。早く来いよ!パク・ヘイン!俺、凍え死んじゃうよ…!』

純白ドレスに身を包んだヘインは、真っ白なゲレンデで待つジュンヨンを見つけた。





ジュンヨンは、両手を広げて、花火を回しながら、ヘインに笑顔を見せた。

駆け足でやって来たヘイン思いっきり抱きしめたまま、抱き上げると大きな声で叫んだ。

『パク・ヘインは、俺の妻だ!』



そして、その夜、2人の愛は深く結ばれた。

一方、サンジンはファジョンにフラれているミンホの様子を確認した後、ミンホを呼び出して箱を手渡した。

『香港に30階のビルがある。KNT通信のだ。君にそのホテルを任せる』

『は…?』

『彼女、美人じゃないか。幸せにしてやりたいだろ?
仕事が上手く行ったら、後は俺に任せろ』

『あの…それって、どういう意味ですか…?』

『ゴウンに何もかも知られた。後は自分で考えろ』

ミンホは、手渡された箱を開けて中の拳銃を見て呆然とした。

パク•ヘイン復活コンサート当日。
ヘインの控室を訪れたジュンヨンは、鏡越しに写るヘインに聞いてみた。



『気分は、どう?』

『とっても緊張してる。今日に限って、凄く不安で…』

『また、そんな事を言って。約束しただろう?』

『パク・ヘインらしく、強く生きる!』

『コンサートが終わったら、結婚しょうな。海辺に可愛い家を建てる』

ヘインは、嬉しそうに笑みを浮かべて頷いた。

『コンサートの時は、1番良く見える席に座ってね!』

『心配するな。引きずり出されても見てるから』

『ジュンヨンの顔が見えたら合図するわ!
私が上手く歌えたら、ジュンヨンも合図してね!』

ジュンヨンは笑顔で頷く。

『もう行くよ。準備があるから!』

『もう少しいて!あっ、そうだ!』

ヘインは立ち上がって、取り出した点字のネックレスをジュンヨンに見せた。

『このネックレス、昨日から渡そうと思ってたの』

そう言うとヘインは、点字のネックレスをジュンヨンの首に掛けた。

ジュンヨンは、ペンダントトップを見て握りしめて言う。

『でも…ヘインのだ』

『私の物はジュンヨンの物よ。これから、ずうっと一緒なんだし』

ジュンヨンは、ヘインにそっと優しくキスをした。

『後でな…』

ヘインは笑顔で頷いた。

2人は名残り惜しみながら、絡めた指と指を離した。




ジュンヨンとヘインが取り戻した愛。
ジュンヨンとゴンウの復活した友情。
全てが好転し始めた時に悲劇が訪れる…。


同夜、サンジンは、妻スジからエコー写真を見せられて、妊娠4ヶ月である事を知らされた。
そして、ゴウンが父となるサンジンが喜ぶだろう写真を見せる助言をしていた事。とサンジンがNYから帰国したら、会社を辞めて、留学する予定でいる事をスジから聞かされた。
サンジンは、本当のゴウンの気持ちを知った。

サンジンは、慌てて部屋を飛び出す。
ミンホに止めさせようと携帯に電話をする。
しかし、銃撃する決意を固めていたミンホは、勢い付ける為、車内で酒を飲んで酔ってサンジンからの着信音に全く気付かないでいた…。


一方、ジュンヨンとゴンウは会場ホテルの部屋でコンサート後の内祝いの準備を整えていた。
そして、コンサート会場へ向かう為、ゴンウを残して、部屋を出たジュンヨンはエレベーターを下り際に帽子を目深に被る男と擦れ違った。

ジュンヨンは、胸騒ぎを感じてゴンウの部屋に引き返す。

ジュンヨンが、部屋の扉を静かに開けて中を覗くと、ゴンウに拳銃を向けているミンホを発見する。



部屋の中に入ったジュンヨンは、隙を見てミンホに襲い掛かって、三人の取っ組み合いが始まった。

そして、一発の銃声が部屋中に響き渡った…。

ミンホに撃たれたのは、ゴンウをかばったジュンヨンだった…!

ジュンヨンは、直ぐさま病院へと搬送されて、ミンホは警察に連行されてた。

ジュンヨンは、撃たれた場所が悪く多量出血と腹膜炎を起こして、危険な状態だった。
医師から冷酷な宣告を受けたゴンウは、涙を流して必死に助けを求めた。

『人を助けるのが仕事だろ!お願いします!助けて下さい!死なせたくないんだ…』

ゴウンは治療室のュンヨンの側に行き、泣きながら叫んだ。

『ジュンギュ…しっかりしろ!
俺が判るか…?どうして…俺なんかをかばったんだよ…』

『…うっ…、ゴンウ…』

『な、何だ!?』

『俺を連れて行ってくれ…。
ヘインの所へ…、ヘインと約束したんだ。
ここで死にたくない…。頼むよ…、帰りたい…。
ヘインがステージに立つ姿を見たい…。ヘインに会いたい…』

ジュンヨンは瀕死の状態でありながら、涙を零してゴウンに頼んだ。

『お前は死なない!死なせない!!お前の事は俺が守る!!』

ゴウンは、ジュンヨンの手を強く握りしめながら答えた。
むあう
ゴンウは、約束通りにヘインに会わせようと医師に内緒でジュンヨンを病院から連れ出して、ジンピョが運転する車でコンサート会場へと向った。




車を降りるとゴンウはジュンヨンを背負いながら、お互いに心の中で会話をした。

『ジュンギュ覚えているか?
真の友とは、相手の悲しみを背負うものだって。
そうなりたかった。お前は最高の親友だ。
いつだって親友だ。昔も今もこれからも。

ごめん…、酷い事して、苦しめてしまって。ごめん…。ジュンギュ…、ごめん…』

『…ごめん…俺の方こそ…。
辛い目に合わせてしまって…、ヘインの事、愛しているから、渡せなかった。ごめん…』



コンサート会場は、大勢の観客で埋め尽くされていた。
そして、熱気に溢れている中、司会者の紹介でヘインが登場して来た。

ヘインは、最前列に座っているジュンヨンの姿を見つけた。
ヘインが微笑みむとジュンヨンも微笑み返した。

そして、『別れようと』を歌い始めた。
ジュンヨンは、ヘインを見つめながら、初めて幼少時代にヘインと出会った日から、今日まで2人で過ごして来た日々を思い出しながら、薄れ行く意識の中で呟いた。

『パク・ヘインがステージで歌う姿は1番綺麗だ。
ヘイン…、この世で1番可愛い。俺のヘイン…。
笑ってろ…、俺がいなくても幸せになれ…。ヘイン…、愛してる…』

そう言い終えると、ジュンヨンは静かに目を閉じた…。





月日が流れて、「隠れ家」の川辺にヘインがたたずんでいた。
その隠れ家の中から、ギターで弾かれた『別れようと』の音色が聞こえて来た。

ヘインは、ギターの音色に導かれるように小屋の扉を開いて、静かに中に入って行く。

ギターを弾いていた少年は、ヘインとジュンヨンとの子供ジュンホだった。

『母さん、父さんみたいに上手く弾けた?』

ジュンホは、笑いながら、母ヘインに聞いてみた。

『あと…、これくらい足りないかな?』

ヘインは、指で示して見せた。

『なんだぁ…、いっぱい練習したのに』

ヘインは微笑みながら、息子を褒めるように両手でジュンホの頬を撫でた。

そして、2人は小屋を出て歩き出す。

『母さん、大きくなったら、父さんみたいに立派な作曲家になる!』

『本当に?』

『それで、僕の曲は母さんだけに歌わせる!
母さんがステージに立つと本当に綺麗だもん!』

ジュンホは、自慢げに笑顔でヘインに自分の夢を語った。

『うふ、そう…、楽しみにしてる』

ヘインは、ジュンホに笑顔で答えた。

そして、ヘインは一瞬、愛するジュンヨンを側に感じて語りかけた。

《愛しています。光り輝く愛をありがとう。
私とても幸せです。あなたが残してくれた尊い愛を守る事が出来て…。
愛するジュンヨン…、もう1度めぐり逢って、永遠に一緒にいられる日を心から待ってる…》



〜FIN〜




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