第1話 悲しき出会い

1988年、ソウル・オリンピック後の韓国…。

小学校に通う少年ソ•ジュンヨンは、母ヒャンジャと米軍基地村にある歓楽街に住んでいる。

母ヒャンジャは、甲斐性なしの夫と離婚してジュンヨンを引き取って、ママとして母屋と隣接する場所で酒店『サボイ』クラブを経営しながら、ジュンヨンと暮らしている。

そんなジュンヨンは、母親が水商売をしている事で、同級生のイ•ミンホ達に馬鹿にされながら、喧嘩の絶えない日々を過ごしていた。

そして辛い時には、自分1人だけが知っている「秘密の隠れ家」に通っていた。
そこは、数年前から空き家となったままの誰も住まない無人の小さな小屋だった。

その小屋でジュンヨンは、昔、父から与えられたギターを弾きながら過ごしていた。

ジュンヨンの父は、サックス奏者であった事から、小さい頃から父の演奏を聞いて育った。
そんなジュンヨンにも、既に優れた音楽的才能が秘められていた。

ある日、ミンホ達との喧嘩に負けたジュンヨンは近くにいた少女に気付く。
喧嘩に負けたのを見られたと思ったジュンヨンは、怒って靴を投げ付ける。
すると、少女は避ける素振りをしないで、倒れてネックレスを落としてしまう。

その少女は、心優しい盲目の少女・パク・ヘイン…。

ヘインは、両親を亡くして叔母でステージ歌手のミスク(芸名オードリー)に本当の娘のように育てられていた。
この日、ミスクがジュンヨンの母ヒャンジャのクラブで働く事になって、ヘインと共に基地村へと引っ越して来たばかりだった。

そんなヘインの事情を知らずにいたジュンヨンは、悪い事をしたと思いながらも素直に謝る事が出来なかった。

そして翌日、ヘインはジュンヨンと同じクラスに編入して来た。
ジュンヨンは、ヘインの送り迎えをするように担任から指示を言われても素直に従う事が出来ず、公園で拾った点字のネックレスを返す時も無愛想な物言いになっていた。

そんな中、一人で下校するヘインの後を追跡していたジュンヨンは、ヘインが踏切りで電車に轢かれそうな危機迫る状況下でも声を掛ける事さえ出来ないでいた。

数日後、ジュンヨンは下校途中に雨が降る中を傘も挿さずに歩くヘインを見かける。

ヘインを自転車の後ろに乗せて、二人は木の下で雨宿りをした。
そして、ジュンヨンは、少しでもヘインが雨に濡れないようにと、両手でヘインの頭上を被ってあげた。

この日以来、率先してヘインの送迎を行い、ジュンヨンの日課になる。

2人は、急速に仲良くなって行く。

そんな、2人の様子を見ていた近所に住む同級生のファジョンは、苛立ちを募らせる。
何故ならば、ファジョンはヘインが現れる以前から、ジュンヨンの事が好きだったからである。
しかし、ファジョンが誕生日プレゼントをあげたり、弁当のおかずを分けてあげるなど、事あるごとにジュンヨンの気を惹こうとするも、毎回、空振りに終わってしまう。


一方、淡い恋心を抱き惹かれ合うジュンヨンとヘイン。
しかし、ミンホやクラスの男子達が目の見えないヘインの事を馬鹿にして、2人の仲を冷やかした。

『ジュンヨン、こんなのと付き合ってるのか?』

ミンホが先頭を切って、問い詰めるるとミンホの仲間が同調する。

『付き合ってるんだぜ!
毎日、行き帰り自転車に乗せてデ−トしてるじゃん!』


ジュンヨンの事が好きなファジョンは驚愕して、ミンホや仲間達がヘインを誹謗する。

『もう止めろよ!可哀相だから、乗せているだけだって!』

ジュンヨンは、恥ずかしさの余り、自分の気持ちに素直になれなくて、つい心ない言葉をヘインの前で言ってしまった。

『ヘイン、聞いたでしょ?本当はアンタの事、嫌いなんだよ!』

ファジョンは、安堵したようにヘインに言い放った。

『可哀相だから』と、言ったジュンヨンの言葉にヘインは深く心傷付いた。

その日以来、ヘインはジュンヨンの自転車の送迎を断り、ヘインは1人で登下校するようになった。


ある日、ジュンヨンとヘインの仲違いに気を良くしたミンホ達は、ヘインに対する虐めをエスカレートさせていた。

ミンホがヘインの弁当にミミズを入れた。

その様子を見ていたジュンヨンは、我慢出来なくなって、ミンホに殴り掛かって怒鳴り付けた。

『おい!これで判ったろ!?
今度、ヘインを虐めるたら、許さない!その事を忘れるなよ!』


放課後、ヘインは校門でジュンヨンを待っていた。
自転車に乗ったジュンヨンがヘインの前にやって来た。

『乗れよ』

『さっきはゴメンね。私のせいで…。
いっぱい、打たれたんでしょ?痛くない?』


『打たれる訳ないじゃん!』

『本当…?』

『これでも喧嘩は強いんだぞ!乗れよ』

ジュンヨンは、安堵するヘインの手を引いて、自分の後ろに乗せて走らせた。
銀杏並木へと連れて行き、銀杏の葉をヘインの髪飾りにしてあげたり、雪のように舞い降らせて2人は楽しんだ。

その帰路でヘインは、誤って転んで膝に怪我を負う。

『大丈夫?血が出てる。薬を取って来るから待ってて!』

ジュンヨンは、駆け足で「隠れ家」に薬を取りに向かった。

そして、1人痛みを我慢するヘインの前に少年が声を掛けて来た。

『転んだの?いっぱい血が出てるよ。ちょっと待って…』

黒いス−ツを着た少年は、ポケットからハンカチを出すと、膝に巻き易いように折りたたんでヘインの膝に巻き付けた。

その時、薬を持って戻って来たジュンヨンと少年の目が合った。

『ゴウン!会長が探してる』

その少年は、亡き母の法要に出向く途中、ヘインの手当てをしてあげていた。

ジュンヨンは、少年を迎えに来た大人の男性と共に去って行く少年の後ろ姿を見ていた。
その少年もまた一瞬、立ち止まる。
そして、振り向いてジュンヨンを見つめ返して去って行った。

その少年の名前は、イ・ゴウン…。

数年後に再会する事になる3人の運命的な出会いであった…。

ジュンヨンとヘインの仲が戻ったのも束の間、今度はギャンブル好きのヘインの叔母
ミスクが借金を踏み倒して逃げていると、金貸しの女スクジャが店に取り立てにやって来た。
その事態を察したミスクは、1人行方をくらます。
『ミスクが出て来ないなら、姪のヘインを連れて行き売り飛ばす』と、スクジャは言いすごむ。

『あたしには元々、関係ない事だし勝手にしな』と、ジュンヨンの母ヒャンジャは取り合わない。

ヘインと一緒に帰宅して、偶然に会話を聞いていたジュンヨンは、ヘインを連れ出した。

『何処へ行くの?』

『秘密の場所で誰も知らない所。どうした疲れたか?』

ジュンヨンはヘインの白杖を取り上げて、手を握った。

『これで杖は要らないだろ?一緒に歩こう!』

ジュンヨンは、ヘインの目となって、支えて行こうと決心する。そして、隠れ家に案内した。

『人を連れて来たのは、ヘインが初めてなんだ』

寒がるヘインにジュンヨンは上着を掛けてあげて、牧を燃やす。
そして、ギターに触れたヘインからリクエストされて、ジュンヨンは自作曲を弾いて聞かせてあげた。

『凄く素敵な曲ね。それ、何っていう題名なの?』

『題名…?自分で作ったから特にないよ。
まだ出来上がってないけど、最後まで出来たら聞かせるよ!』


ヘインは、嬉しそうな笑顔で頷いた。

その一方で、2人が帰宅しない事で周囲の大人らが心配して、行方を探し回っていた。

そして隠れ家では、ヘインが急に熱を出していた。

『顔色が悪いし、苦しそうだから、帰らなきゃダメだよ!』

ジュンヨンは、ヘインを説得する。

『帰らない… 帰ったら、ジュンヨンと離れ離れになっちゃう。
私達を追い出すって、ジュンヨンのお母さんが言ってた…』


『そんな事させないから、心配しないで!』

ジュンヨンは、熱で意識朦朧とするヘインを背負い、何度も励ましなから、サボイ•クラブの店先に到着する。
そして、ジュンヨンは母ヒャンジャの前で必死に悲願した。

『もうケンカもしないし、勉強も頑張るから。
お願いだから、ヘインを何処へも連れて行かせないで!』


泣いて訴えるジュンヨンの気持ちを察したヒャンジャは、仕方なく承諾した。


そして、ヒャンジャはミスクの借金を肩代わりした。
ミスクは、ギャンブルを止めて借金完済するまで、ヒャンジャの店で一生懸命に働く事でヘインは、ジュンヨンと共に過ごす事が出来るようになった。


後日、ジュンヨンは、隠れ家でヘインに聞かせた自作曲の完成させた曲を聞かせてあげた。

『とっても素敵な曲』

『この曲、ヘインにあげるよ。プレゼント!』

『本当に?だけど私、何もお返しが出来ない…』

『いいんだって!』

『コレ、あげる』

ヘインは、点字のネックレスを外すして言った。

『でも、ヘインのじゃないか?』

『私の物は全部、ジュンヨンの物よ。
だって、これから、ずっと一緒に居るんだし』


ヘインは、そう言って、ジュンヨンの首に点字のネックレスを付けてあげた。
そして、ジュンヨンの頬に触れて聞いてみた。

『知りたいの…。ジュンヨンって、どんな顔しているのか…。触ってもいい?』

ジュンヨンが黙って頷くと、ヘインはジュンヨンの顔に触れて、指先で確かめていった。

そして、2人は10代の高校生に成長する…。





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